空間造形学科の専門科目で、例年一年生が全員受講します。都市・ランドスケープから建築空間・インテリア空間まで、幅広い領域を網羅するカリキュラムが特徴で、一年時からかなり専門的な科目が盛り込まれていると感じます。
同じく非常勤をしている武蔵野美術大学の基礎デザイン学科では、色彩論Ⅱ(二年生)を担当しています。基礎デザイン学科では一年の前期に色彩論Ⅰという科目があり、いずれも必修です。全国的にも珍しいと思いますが、実にほぼ一年をかけて色彩学の基礎・色彩論への展開を学ぶという、じっくり時間をかけてデザインと色彩の関係を体験し考察するという、文芸大とはまた違った特徴があります。
文芸大の授業は2つの科目を1日で実施します。3限で計画、4・5限で演習という組み合わせで、3コマ×5週間の集中型の授業です。
講義(座学)と演習(実技)を連続して実施することができ、演習の時間をたっぷり取ることができますが、5週間というのはかなりの短期決戦でもあります。
その中で色彩学・色彩論の基礎から応用(実践)までを網羅するのは中々難しく、例年課題の設定や全体のプログラムは7年目を迎えた今も、少しずつ手を入れてバージョンアップを繰り返しています。
今年の新しい試みとして、デザイン活動のベースとなる色彩学・色彩論の基礎的な事項と自身の専門である環境色彩デザインの位置づけを下図のように図式化する、ということ考えてみました。
もとは演習の最中、ホワイトボードに思いつくまま殴り書きしたものなのですが、以下は再度全体の構成を考え、清書したものです。
上段は大学の講義や演習で展開する基礎項目 |
現象・技法・効果・調和論…。様々な要素はそれぞれとても興味深く(…自身にとっては)、相互の関わり合いは応用が効いたり、影響しあったり。自身の頭の中では相関図のように位置づけが見えていたものの、こうして可視化したのは初めてのことでした。
分類する、というのは複雑なものごとを整理して考える時の基本ですが、さらに線を引くという行為は相互の関わりや繋がりを明確にし、何と何が影響し合い行き来が可能な行為なのか、又は一方通行なのか。そういったことがとても整理しやすくなります。
他の分野の方に「色はパラメータが多すぎる」と言われたことがあります。最初は意味がよくわからなかったのですが、この現象と技法と効果を挙げてみるとなるほどとうなずける部分があります。結局「見え」に影響しているのは何なのか、ということになる訳です。
ちょっと説明的になりますが、建築・構造物の色彩計画を考える際は現象的分類の内の表面色を扱うことが殆どです。ものの色の見え方に影響を与えるのが心理(視覚効果)です。視覚効果には様々な種類があり、中でも対比と同化現象はより細かく分類され、各々の現象性は芸術・デザインの分野に広く展開されています。
視覚効果や現象性は配色の技法に多様なバリエーションをもたらし、色彩調和を生み出します。調和論だけ、あるいは視覚効果だけが独立して扱われる(解説される)ことも多いのですが、これらは全て図のように関わり合いを持っているということがおわかり頂けるでしょうか?
建築物の色彩調和だけでは成り立たないのが環境色彩デザイン |
日本に限らず、今まで様々な国で色彩調査をした経験から、環境色彩においては調和の「型」は表記の3種に絞られます。学問としての色彩と、地の環境がつくってきた自然や文化、建築・構造物の成り立ち。この両方を融合させるのが、環境色彩デザインという分野です。
…とはいえ。この図にはゲーテの色彩論や表色系のことが盛り込まれていません。これをうまくまとめることができたら、現代色彩学の新しい方向性を導きだせるかも知れない…等と、やや妄想が膨らみ始めたところです。
線を引いては消し、を繰り返しながら。今後も益々、建築・土木設計を学ぶ学生が色彩に興味を持ってもらえるような取り組みを続けて行きたいと考えています。