※勝手に命名したものです。自身の周囲には広告物や工作物を茶色にすること・したことに反対の意見をお持ちの方が多く、効果や成果の検証以前に「もうやめるべき」「思考停止だ」等と異を唱えられる事象の総称です。若干、被害妄想気味であるとは自覚しております。
先日知人が那須のコンビニの写真(看板が濃茶と白)をSNSにアップし、「(急いでいるときなど)わかりにくい!」と憤慨している様子を目にしました。
確かに濃茶に白抜きの看板は通常のそれとは異なり、派手さで人目を誘導するような刺激は全くありません。企業はこれまでCI(コーポレート・アイデンティティ)・VI(ビジュアル・アイデンティティ)を活用して企業や商品・サービスのイメージを「統一的に」展開することで認知度の向上を目指して来ました。
そしてそのための工夫を重ねている立場の方々(マーケティングチーム・デザイナー・フランチャイズのオーナー等々)にとっては、「地域の景観特性に応じて配慮せよ」と指導(あるいは助言)され、変更を余儀なくされることは恐らく苦渋の選択であるのだろう、と推測します。
下の画像は「那須 看板 茶色」 で画像検索した結果です。
看板だけをこうして取り上げてみると、確かに企業や店舗のイメージは薄れていて「赤とオレンジと緑」を目指して探そうとするとやはり見つけにくい、ということになるとは思います。
「那須 看板 茶色」で検索した結果 ©Google |
もう少しあらゆる要素をフラットに整理し、「茶色だからダメ」あるいは「何でも茶色にするのはもう反対!」という議論からは抜け出したいなあ、と考えています。
そこで以下のようなダイアグラムを描いてみました。
対象の特性の分類と共に、決定の主体に合わせ「~でよい」「~でもよい」等、段階を整理してみました。 |
ごく簡単に分類すると
①色を選定する・決める人に経験値があり、周辺との関係性を考慮・熟考して色を選定・決定することが出来るか・否か
という点と、
②他の環境構成要素との取り合いや整合性を調整する余裕(時間・労力)があるか・ないか
という2点が「茶色(※)でよい」とするか、「しっかり検討・協議をしてその環境にふさわしい色を選定するか」の分かれ道になるのではないか、と考えます。
その他の条件として共通解・一般解としての「茶色」があり、個別解・特殊解としての「その他の色(素材)」があり、その間はグラデ―ショナルであって良いと思っています。
※茶色、というと随分幅を狭めてしまう印象です。平成26年に国土交通省が策定した「景観に配慮した防護柵等の整備ガイドライン」では10YR 6/1(グレーベージュ)、10YR 3/0.5(ダークグレー)、10YR 2/1(ダークブラウン)の3色を「推奨」しているに過ぎません。
近年、ブルーシートのブラウン版や果樹栽培等で使用するブルーの防風ネットのブラウン版の開発・普及が進められています。濃淡様々な「茶色」を総称して山梨県では「自然色(しぜんいろ)」と呼ぶことにしたそうです。
その自然色シート・ネット普及委員会の活動の様子はこちら。
自然色(10YR)を地の色とする根拠の一例はこちら。
下の写真は2015年3月に実施された甲州市主催のペンキ塗り、市民ボランティアによるガードレールの塗装風景です。
年度末の休日にも関わらず、100名近くの方が参加し、あっという間に予定箇所が塗り終わりました(…子供たちが飽きる前に終わって、本当にほっとしました)。
明度2や3だと暗く重い印象もあるため、甲州市では10YR 4/1を採用しました。 |
そもそも白でなければならない理由はありませんから、このように実際の状況に応じて色を使い分けるというのはとても賢い方法だと感じています。
この部分も外側だけを10YR 4/1で塗装しました。 |
A 自然色 が よいもの
B 自然色 でも よいもの
C 自然色 でなくても よいもの
D 積極的に新しい可能性を探求すべきもの
という、大きく4段階で状況を整理し、適宜使い分けを行うことが重要なのではないか、と考えています。
自身はこれまでの経験から自信を持って「自然色 が よいもの」と「自然色 でも よいもの」が相当数ある、と宣言することもできます。甲州市のペンキ塗りの際、多くの方が「色でこんなに印象が違うのだ」ということに気づき、これまでの白一辺倒が「緑豊かな景観の中ではいささか主張し過ぎていた」ということの発見に至りました。
外側をあっという間に塗り終わり、参加者全員で記念撮影。左上の未塗装部分との比較、いかがでしょうか? |
自身は専門家(一応)としては、そういう風当りにも耐えつつ、効果が証明されつつある活動に力を注いでいる方々を支援する立場でありたいですし、個性や賑わいがなくなる、と嘆く方々の意見にももちろん耳を傾け、折り合う地点を探し続けて行きたいと考えています。
また、個人的には「○○撲滅」というような極論ではものごとは容易には動かせないし、解決に繋げるのは難しい、と感じています。
都度状況を整理し、公平性の担保に努め、相互の利益を図り、あらゆる調整に時間をかけながら「継続」していくこと。結局のところ色の問題ひとつとっても、そうたやすい近道はないのかも知れません。