一方、そうした検証もPCソフト等を操作する側の意思が働くため、色彩選定の知識がなければ『どうすればいいのかわからない』状態を生みやすく、ハウスメーカーのサイト等では結局のところ好き・嫌い、という嗜好性に偏ってしまう場合も多いように感じています。
私自身はカラーシミュレーションは単なる検証、とは考えていません。
具体的に言うと『何色にするか』を選ぶためのツールではなく、『選定した色が周辺との関係においてどのように見えるか』を検証するためのツールである、と思っています。
例えばこんな具合です。
昨年訪れた野沢温泉村でみかけた風景。冬枯れの景色の中で、人工的な青が目立っていました。 |
カラーシミュレーションにより青いシートを穏やかなYR(ワイアール)製品に変えた場合。 |
その場の状況を整えたい、あるいは『こういう見え方が望ましい』という指針や目標があって始めて、色彩の善し悪しは決定付けられます。
個人の趣味やその日の気分でファッションやプロダクト製品を選ぶとのは異なり、何色にしようかなという検証を闇雲に建築物や工作物で行うことには抵抗がありますし、対象物によって色(や素材)を選ぶということの役割や目的には大きな違いがあると感じています。
また一方では、そうした自由に色を変えられる、という特性を積極的に生かす場合もあります。住民参加によるワークショップなどの場合にはまず好きな色を選んでもらい、それを建築物等に展開した場合、どのような見え方をするか(大抵の場合、そんなつもりではなかった、ということになりますが)を実際にみてもらい、まちの色がどの程度のものであるかということを体感してもらいます。
百聞は一見にしかず。
まさにこの言葉の通りですが、環境色彩デザインにおいては、その選定した色(いくつかの候補はもちろんあれど)が『まちなみ形成においてどれほど効果的であるか』という点を示すことが出来るか、ということに力を注いでいます。
(本項のカラーシミュレーションは山田敬太さんが作成しました。山田さんが執筆を担当したMATECOレポートはこちら。)
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