これは代官山のヒルサイドテラス内です。代官山は猿楽塚等の史跡も見られる歴史ある土地ですが、全国的に有名なお寺や神社ではなく、自分の暮らしの身近な場所にも、このような環境は存在するのだなと思い、やはりデザインを考える上でもう少しモノやコトの変遷ということを意識して行かなくては、と気持ちを新たにしました。
文字や色がなくても意図は伝わるものだな、と思いました。 |
日本のサイン。これくらいで十分、というところも多いのではないかと常々考えています。過去に撮った写真を探してみたら、そのような視点で見ているものが色々出てきました。
庭園の留め石。ここから先はご遠慮ください、という静かなメッセージ。 |
御殿場東山ミュージアム入り口にて。裏の林から取って来てつくりました、という雰囲気の侵入防止柵。 |
その地に・場にある素材を使った表示や工作物。伝統的な建築物と同様、至極自然に周辺環境に溶け込んでいます。
山梨県忍野村でみかけた、駐車場まわりの柵。蕎麦屋の店主の方がつくられたもの。 |
その地に馴染むということは、単に埋没する・目立たないというマイナスの視点だけではないことが実感できるのではないでしょうか。景観アドバイザーを務めている関係から、特に山梨県には訪れる機会が増えましたが、様々な地域で見られる住民の手による丁寧な環境整備は、周りの景色が引き立ってとても個性的だと感じることが数多くあります。
文字や誘目性の高い色が必要な空間・環境ももちろんあります。でも、どこもかしこも均一に目立たせれば良いかというと、やはり主張や表示には『ふさわしさ』という尺度があってしかるべきだと思います。
それは照明ともよく似ていて、とにかく最大限に明るくしておけば安心・安全、という思い込みをそろそろ捨てて、省エネの観点からも季節や時間の変化に応じた適切な明るさを使いこなすべきである、という考え方と重なります。
数年前を想像することすら難しい、時間の流れ。一方、今いる場所は自身が生きてきた時間より圧倒的に、長い時間を背負っている場合が殆どです。これから10年、20年先を予測することは大変難しいことですが、同じ目線で10年、20年と少しずつ過去を見直していくということに、もう少し気を遣って行きたいと思っています。