最近◯◯の原理、ということについてあれこれ考えています。
色の場合、色が見える原理、発色の原理、調和の原理…等、いくつか挙げられますが、今回は建築・土木の色彩計画における配色及び調和の原理について、まとめてみたいと思います。
調和の原理、色彩学においてはジャッド(アメリカの色彩学者・1900-1972)の4つの色彩調和論が有名です。改めて記すとごく当たり前のことのように思えますが、1800年代から議論されてきた様々な色彩論・調和論を要約したという点、いつの時代においても調和ある(美しい)色使いに対する論理が求められてきた証拠と言えるのではないかと思います。
ジャッドが示した調和の原理は以下の通りです。(出典:日本色研事業株式会社HPより)
1)秩序の原理:規則的に選ばれた色同士は調和する
2)なじみの原理:いつも見慣れている色の配列は調和している
3)類似性の原理(共通性の原理):色の感じに何らかの共通性がある色同士は調和する
4)明瞭性の原理:明度や色相などの差が大きくて明瞭な配色は調和しやすい
心理学に詳しい方はすぐにお気づきのことと思いますが、それぞれの項目はゲシュタルト心理学に登場する知覚の法則(類似の要因・近接の要因・閉合の要因・良い連続の要因、等)ととても類似しています。
調和に原理があるということを上記のように示した上で、建築の色彩計画について考えてみたいと思います。
下の図は色彩が建築にどのような影響を与えるか、ということを模式的に示したものです。(※ここでは『色彩を計画する』ということの説明なので、質感等は一旦排除しています。)
色彩の感情効果と配色(色彩計画)がもたらす効果 |
色彩には実に様々な固有の感情効果があります。微細に研究をしていくと、国や年代による差違も生じるものの、概ねの印象・要素の一つとしてその効果を把握し、検証や選定の『きっかけ』とすることは、一つの原理として成り立たせることが出来るのではないか、と考えています。
配色による色のニュアンスの変化 |
上図の左には白と黒~明るい灰を並べました。それぞれの色は固有の感情効果を持っており、分類して行くと例えば白は軽く黒は重い(※あくまで色として考えた場合。物性として重い白、もあり得ると思います。)、あるいは明るい灰は弱いなど、人の感情に与える効果があります。
それはあくまでも『単色の持つ効果』であり、2色以上の配色になると、その配色による対比(コントラストの強弱)により、感情効果は増幅あるいは減衰します。
建築の色彩計画においては、更に社会性や風土・地域性等を読み取り、対象にふさわしい尺度を適用することが必要です。上図の左側にその尺度の考え方を示しました。
私達が生活する環境において、単色が視界を占領する状況というのは滅多にありません。1色を見ているつもりでも、周囲や背景にはかならず別の色が存在し、見ている対象物に何らかの影響を与えています。一つの建築物の外装を単色で統一する、という状況の場合でも、周囲の色の影響を受けないわけにはいかず、ここで(配色)調和の原理を当てはめて考えてみることは、結果的には『どのように差違を生み出すか』ということに繋がると考えています。
…話を戻して、色彩計画に2色以上を用いる、ということを前提に考えてみます。
上の図の右側に『配色する』ということのイメージを示しました。白は変えずに、組み合わせるもう1色を黒から明るい灰色とし、模式的に分節化を図っています。
単色で見た場合、あるいは他の色と並置しただけでは判断しにくい『色のニュアンスの変化』が見て取れるのではないでしょうか。よく『白に様々な階調がある』とは言われますし、あるいは『アーキテクトホワイト』と呼ばれる純度の高い白について等、建築界ではまだまだ色は『単色としての特性』の判断・評価に留まっているのではないか、と感じることが多くあります。
建築の色彩計画において日頃からもっと様々な可能性があるのでは、と感じる部分は、『組み合わせが生み出す様々な効果』を『場(や地域)、空間の特性に併せて積極的に展開してみる』ということです。
一般に語られる色彩調和の理論(例えば3色調和・4色調和等)をそのまま建築や土木工作物に展開するには無理があります。色彩計画の対象となる建築物や工作物、あるいはその集合は、それ自体が一つの環境を形成しうるものであり、既に様々な他の要素との関係性の中で調和を考えざるを得ないためです。
環境における色彩調和には、色彩における調和の原理を踏まえた上で、ふさわしい尺度を体感によって身に付けることが重要なのではないか、と考えています。
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