普段気になった色の見え方を撮りためていますが、最近改めて環境色彩が信用している「鮮やかな色の使い方」は「動くか、動かないか」という判断基準の中に光明が読み取れると感じています。
面積、材質、仕上、形態、そして場との関係性…。検証のためのフィルターは幾重にも重なり、経験を重ねるほどに複雑になっていく部分もあります。
この「建築・土木設計を学ぶ学生のための色彩学」では、出来るだけ小難しいことをすっ飛ばして(経験に基づくあれこれの方法論は宿ってはいますが)、読んだ方が「ふーん試してみようかなあ」という、色を知るため・興味を持つきっかけになればと思って書いています。なので今回も「鮮やかな色は動くものに」という1つの法則を掲げ、それがいかに場に彩りを与え、かつさほど違和感がないものであるか…ということを示してみたいと思います。
色はこうして人の目を誘うのだな、と感じます。 |
写真がうまく撮れませんでしたが…。思わずやきそばが食べたくなる赤。富岡にて。 |
自然景観の中の寒色系は定位しない面色(film color)。人工物の色の面積がこれくらいでも、十分瑞々しさがあります。 |
動く・動かない、という基準は以前に「誘目性のヒエラルキー」という項目でまとめています。自然界の色彩構造を手本にし、「鮮やかな色は動く小さなもの(命あるもの)が持ち、不動の大面積を占める色(土や石、樹木の幹など)がそれらの変化を支えている」という色の見え方を構造化したものです。
自然の色の美しさに限らず、色は単体の良し悪しではなく「どう見えているか」という関係性の問題です。鮮やかな花が印象的に見えるとき、背景や周囲との「対比の度合い」で見え方が決まります。もちろん、距離を置けば光の加減や湿度等も影響してきます。
この法則が当てはまるな、と思う例をいくつか挙げてみました。「全体の中で小さな・動くものが(過剰になりすぎずに)人目を誘う」ということが言えるのではないかと、これはかなり自信を持ってそう考えています。
こういう場合は、何色でも違和感なく受け入れられそうな気がしませんか?
「命ある・動くものが鮮やかな色を持つ」という自然界の構造は、風景を眺めると良く理解できます。 |
建築・土木設計にこれをどう当てはめるのか?と思ったそこのあなた。さすがです。これは言い換えると「動かない・大きな面積を持つものには鮮やかな色は向かない」という法則にもなります。
もちろんその可能性(大きな面積に鮮やかな色を用いる)がない、とは言いません。ところが建築家はすぐ「海外だともっと自由で、様々な色がある」と奇抜な、あるいは文化の異なる国の例を次々と挙げてきます。「日本では景観法の規制によって自由に色が使えない」とも…。
それもある一面では、正しいことだと思います。
でも、建築外装における鮮やかな色の出現の可能性や質は本当にピンキリで、長年キリの部分(大型家電量販店やロードサイド沿いの飲食店等)が地域の個性や本来の景色を奪ってきた、という側面もあります。
私は地域の特性に即したある程度の制御は必要だと考えています。鮮やかな色の見え方が自然界と同様、背景や周辺との関係性で「決まる」とすると、まずは周囲が整うこと、も今後の可能性を拡げる方法になり得るかも知れません。
でもまあ、とりあえず色を使ってみたいと思ったら「小さな・動くものに」という法則。駄目だ…と思ったら動かせば良いのですから。一度は試してみる価値があると思っています。
動くもの、小さな部位。色の「使いどころ」を設計の中で探していくだけでも、とても良い訓練になると思います。私達(CLIMAT)もそうした検証を重ねて、最終的に「ないな…」ということに行きつくことが多々、あるのですから。