先月、静岡県で実施された平成26年度第1回景観講習会の講師を務めたのですが、その際のアンケートが先日届き、参加者の層や感想などを読んでみて、改めて公共性の高い要素の色を選ぶ・考えるということの根拠が根付いていないのだなと感じました。
それは決して行政の方や設計に携われる方・各種のコンサルタント…が不勉強だ、ということではなく、やはりどう考えても納得の行くような論理、機能性や安全性を超える根拠を見出すことが出来ないという状況にあるのだと思います。
自身は長年、周辺環境が持つ色彩が(善しに付け悪しきにつけ)その拠り所となることを体験により理解していますが、これはいくら数値で示してもその環境を見ない、あるいは何らかの敬意を払おうとしない方には通じない理論で、もっとごく一般的な経験や体験の共有を言語化しなければ、と長く思考錯誤をしています。
先日の講習会では直近、このBlogに掲載した「鮮やかな色の使い方」を後半の大きなテーマとして挙げました。力を入れて話をしたことが伝わったらしく、アンケートにも
「動く色と動かない色のことは参考になった」
「自然の色の変化の話はとても新鮮で、興味深かった」などの意見が多数書かれていました。
…と、ちょっと伝わったからと言って、それに気をよくしている訳ではありませんので念のため。行政の方々には「実践して頂く」という次のステップがあり、そこに向けても具体の策を提示して行かなくてはなりません。
地表近くにある鮮やかな色 |
これがその次の一歩になるかな、と考えています。
「自然界の色彩構造10の原理(仮)」です。本当は5原則くらいの方が覚えやすくて良さそうですが、今のところ10になっています。これは全て20数年の経験によるものなので、実感もありますし様々な場面で実証も行って来ました。
「色彩の原理」ではなく、「色彩構造の原理」です。自然の色は美しいからそれをそのまま真似する・写し取るということではありません。自然界において、色が美しく・その変化が印象的に見えている「仕組み」に関わる構造のことを解いています。実際、人工物に展開する時は対象の規模や用途、そして場所の特性などとのすり合わせが必要ですし、だから自然素材を使うべき、という単純な話でもありません。
経験を共有しやすい自然界の色彩構造を理解し、それをもとに現代における「色と色、あるいは素材と色」の関係性を再構築すべし、というものです。
自然界の色彩構造、あるいは自然物の持つ色の特性、と言い換えることもできます。
…と、こういう話をすると「日本には純粋な自然景観はない」とか、「どこそこの森の樹木は植林したものだ」「庭園は自然じゃない」とか言い出す専門家もいらしてややこしいのですが。
ここではごく単純に「人が制作・製造したもの以外の生物や時間がつくる自然現象」というように捉えて頂ければと思います。
それは間違っているとか、色々な指摘もあるとは思いますが、自身の分野においてはこの「色彩構造の原理」に当てはめてみると解けることが数多くあるように感じています。2014年中にもう少し練り上げ、より伝わりやすい(=使える)方法論として、確立して行きたいと考えています。
①自然界の地となる色は、動かない・大きな面積を持つ
→土や砂、岩等。
②自然界の地となる色は、暖色系の低彩度色が中心である
→同上。
③自然界の地となる動かない色は、天候の変化によっては明度が変化する
→雨を含むと地の色は、明度が下がる(図の色よりもその変化の差違が顕著)。
④大きな面積を持つ地の色は、単色に見えても近づくと粒子であることがわかる場合が多い
→土や砂、岩等は小さな単位の集積である。
⑤自然界の図となる色は、いのちある・小さなものが持つ
→色鮮やかな草花、昆虫。
⑥自然界の図となる色は、地表近くにある
→同上。
⑦空や海・河等の色は、定位しない変化の大きい色なので、動く色に分類される
→面色(film color)を物体色に置き換えても、同じ色には見えない。
⑧地となる色の一つ、木(材)の色は、時間の経過と共に彩度が下がり、樹種によっては色相が赤みから黄赤みに変化していく
→いのちと共に色は失われていく(そして大地へ還る)。
⑨自然物の集積は距離を置くほど明度・彩度が下がる。
→例えば樹木、葉色が明るくても離れて森を見ると暗い。重なりや隙間の陰が加味されるため。
⑩自然物は時間の変化を受け入れる
→自然物は時間に逆らわない、時間が染み込む。
小布施で見かけたザクロの木。緑と補色の関係にある朱赤、小さくとも印象的な色でした。 |
いかがでしょうか。
まずは箇条書きで、シンプルに表記してみました。ここから、色々発想が拡がるようであれば、しめたものです。今後、それぞれの解説を丁寧に加えて行きます。
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