もう少し、無錫の調査で気になった色彩について、ご紹介しておきます。
到着翌日、ホテルの周りを散歩してまず感じたのは“緑が多いな”ということでした。
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ホテル廊下からの眺め。運河の両側はたっぷりとした緑の帯 |
市の方もこのまちは4~5月と秋が最も美しい、というくらいでしたので、かなり意識して整備をしているのだと思います。緑化の計画図等の資料を調べたところ、市民一人当たりの公園・緑地面積が12㎡とありました。
東京の5.5㎡と比べると約2倍になります。
二日目は車で市内を回ったのですが、湖や公園の周辺だけでなく、市街地にも本当にたくさんの緑がありました。一番驚いたのは下の写真にある高速道路です。
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高速道路足元はかなりの緑量でした。上部の道路部分、手摺は植栽枡になっています |
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高速道路はいずれもとてもシンプルですっきりとしたデザインでした |
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市の中心部、古いまちなみにおいてもその様子は変わりません。中国はどの季節に訪れても何となくモヤがかかっているような印象があり、正直なところあまり空気が良いようには感じられませんが、 今回無錫では始めて“清々しくて快適”という感覚を味わいました。逆に考えると、無錫にはいわゆる“騒色(そうしょく・著しく派手で目立つ色)”が殆どないため、これでもし緑が少なかったら相当殺伐としたまちなみになってしまうのだろうと思いました。
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壁面緑化はこのくらい自然な感じが良いなと感じます |
建築物の外装色が穏やかで、緑が豊富で、季節の変化が生き生きと感じられること。言葉にしてみるとたったそれだけのことで、そのまちの長い歴史やそれを大切に継承してきた都市としての成熟度、が垣間見られるような気がしました。
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無錫太湖の周辺 |
ランドスケープの専門家に尋ねたところ、この鮮やかな葉は
ユヒ科のアルテルナンテラ、とのこと(通称アキランナス)、初めて聞く名前でした。赤・黄・緑と数色のバリエーションがあるそうです。鮮やかな黄色は遠くから見ると花が咲いているようでした。
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奥に見えるのはツツジ。マゼンタ、黄、グリーンの対比が本当に鮮やかでした |
都市を彩る緑と、公園や緑地等に見られる緑や草花。いずれも人の手によってつくられた人工的な自然、ではありますが、都市における緑は防災やヒートアイランド現象の緩和といった効果の他、まちを行き交う人々に視覚的・体感的に心地よさをもたらす存在として欠く事が出来ないと思います。
高木の見事な並木があれば、舗装の単調さなど全く気になりませんし、 何より樹木の列植は様々な建物や構造物の間をつなぎまちなみの連続性を生み出します。もちろん、国どころか地域が違えば管理の方法や環境に対する向き・不向きもありますし、何より整備にかけられる費用が減り続けているという課題も加味しなくてはなりません。
一方、各地で盛んな景観まちづくりでは、市民が一人でも参加できる活動として花や緑の整備は大変活発です。自治体の管理に頼るばかりでなく自らの手で、という考え方は今後も益々、地域の再生や活性化に大きな役割を果たすではないかと思います。
修景というとき、新たな設備や工作物を投資することが難しくても、植物の種を植えることは明日、できるかも知れません。私たちの暮らしと時間を共有する緑の役割はとても大きく、まだまだ多様な可能性を秘めているのではないか、ということをあれこれと考えています。
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