2014年2月18日火曜日

測色019-浅草寺・雷門の色 赤と朱について

はじめにお知らせから。
2014年2月22日(土)、浅草文化観光センターにて『隅田川の景観・歴史的橋梁の文化的価値を考える』というフォーラムが開催されます。

案内はこちら

昨年から活動をはじめたGS素材色彩分科会では、このフォーラムの資料として隅田川にかかる14の橋梁を測色し、そのマンセル値データをまとめたリーフレットを作成しました。当日会場でお配りする他、会後には分科会のFacebookページからダウンロードできるようにしますので、どうぞお楽しみに。

このリサーチのついでに、雷門の色を測ってきました。
10R 4.0/8.0程度でした。

艶やかな雷門。現在はコンクリート製とのこと。
JIS標準色見本帳の色相の配列では10R(レッド)の次が2.5YR(イエローレッド)になります。間をとっていくと、10Rの次は0.1YRですから、10R系の色相は最も黄み寄りの赤、ということになります。彩度は8程度、R(レッド)系の最高彩度(純色)は14ですから、およそ1/2程度彩度が低い色。でも、十分人目を引くとても印象的な色です。


派手な色ではあるけれど、どことなく落ち着きもある色です。例えば赤系の中心色、5Rと比べてみると10R系の色相は(特に彩度が低いと)あまり赤くは見えません。真赤と比べるとかなり黄味を帯びて見えます。

朱を調べてみると、日本の伝統色等にも記載があります。原料は辰砂や朱砂という硫化水銀からなる鉱物で、元は赤褐色または透明感のある深紅色の結晶として産出される、とあります(wikipediaより)。

朱は黄味を帯びた赤と表わされますが、真朱という日本の伝統色はR系で表記されています。原料自体は赤なのに、朱になると黄みを帯びる。そのままの色を何かに定着させることが難しかったのかもしれません。古く中国では古墳の内側や石棺の彩色に使われたそうですから、そうした下地の色とも相まって、黄みを帯びた色としての認識が根付いていったのでは…(と、これは想像です)。

辰砂は日本では弥生時代から産出が知られているそうですが、現代で朱と言えばやはり漆や朱肉等に見られる、黄みを帯びた赤の方が親しみやすく、慣れ親しんだ『和のあか』のではないかと思います。

原料の色、本来の色というのは何千年という時間の経過と共に、少しずつ『扱いやすい』あるいは『何かに置き換えられた』色に変化して行くのかも知れません。

吾妻橋の赤は5R系でした。色々な時代性がミックスした不思議な景色です。
浅草寺の賑わいから離れて、隅田川の橋梁を下流に向かって測りながら歩きました。橋の色をひとつずつ測るという試みは、思った以上に様々な発見があり、マテリアル(鋼材)や規模・構造と色相の相性等についてはまた別途、考察をまとめる予定です。

朱でも赤でも、色が気にならない方にとってはどうでもいいこと…かも知れません。
でも比較をしてみると、朱の方が自然素材(木や石、土等)や樹木の緑が持つ色相と近いので、なじみが良い、ということが発見でき、そうした検証を積み重ねて行けば、その場にふさわしい『あか』を導き出すことができると考えています。

古い木製の鳥居の場合、下地が塗料(あるいは染料)を吸収する、あるいは経年変化が起き易い等の理由により、赤みが抜ける率(黄みに寄る)が高いのではないかと推測します。
これからしばらくの間、色々な鳥居や格子、漆などの色を測ってみるつもりです。






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自己紹介

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色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂