2012年4月3日火曜日

掛川の白いガレージ


3月は予定していなかった出張がいくつか重なっていたのですが、良いタイミングで色々なイベントに参加できたり、旧友に再会できたり、目まぐるしくも充実感のある年度末でした。

少し時間が空いてしまいましたが、浜松で開催された2つのオープンハウスのことをまとめておきたいと思います。
一つは渡辺隆さんが設計された店舗(美容室)兼ガレージ、もう一つは403architecture [dajiba]の戸建住宅のリノベーション、“冨塚の天井”です。

渡辺さんのことを知ったのは20106月に開催された第一回浜松建築会議の席でした。社会に接続せよ、というテーマでの討論の中で、とても静かに、でも力強く『接続せよってタイトルだけど、僕たち(浜松近郊で建築設計を生業としている方々)は既に社会(地域)に接続しているんですよ』というニュアンスの発言をなされていて、そのことがずっと心に残っていました。

直接お話をしたのはそれから約一年後、RE02の建築家と白について、のレクチャーの時だったのですが、相変わらずとても穏やかに、ご自身の設計のお話や色に対する興味についてお話をして下さり、大変謙虚で細やかな気配りをなされる方だなあ、と感じました。

3月中旬、丁度浜松で調査をする用事があったので、その渡辺さんが手掛けられた店舗兼ガレージのオープンハウスに伺ってきました。隣には既存の母屋、二階には施主の奥様が将来使用する予定の美容室のスペースが設えられています。
…建築的なことは相変わらず私に論じる術はありませんので、あくまで素材や色のこと、になりますが。渡辺さんのオープンハウスのとても興味深い点は、カットハットガレージEXPO』と題され、家具やトートバック等の展示の他、オーナーの方が収集されているコレクションの数々も併せて展示が行われていたことです。

ただ建築物や空間を見せるのではなく、来た方に存分に楽しんでもらいたい。あるいは建築にあまり興味の無い方も何かを見つけて楽しんで欲しい…。そんなさりげない気配りに満ちた、とても楽しいオープンハウスでした。

白を基調とした空間は、オーナーが集められているカラフルなゲーム機や車のカタログ等が良く映え、ガレージにありがちな暗く閉鎖的な印象が全く無いことが印象的でした。スチールや木、パーティクルボード等が白く塗装されていますが、それぞれ下地の違いによって微妙に階調が変化していて、それが視覚的に心地よい変化をもたらしていました。

例えば、床にも塗装が用いられていますが、渡辺さんは『歩いているうちにペンキが擦れて下地が見えてきたりするとまたいい感じだと思う』とおっしゃっていて、そういう経年変化の影響を受ける部分と、鉄部等の堅牢な部分とのバランスのコントロールがとても興味深く感じられました。

併せて展示されていた中澤さんの家具は、木とスチールを組み合わせたものでした。座面のとても小さな(奥行きも多分20センチ程しかない!)スツールは、一見座り心地が不安だったのですが、腰をおろしてみるとピタッと安定するので、とても驚きました。スツールとしての使用はもちろん、ちょっと花を飾ったり本を載せたりする台としても使えそうな清楚な感じがともても好ましく、控え目なサイズも中々良いものだなあと思いました。

渡辺さんはご自分が設計された空間に中澤さんの家具が合う、と確信をしていらしたそうですが、確かにコンパクトな美容室の中に、あつらえたようにしっくりと馴染んでいました。

同じく併せて展示されていた後藤さんのトートバック。お知らせを頂いてから、また実際に使っている方のコメントなどを拝見するうちとても気になり出し、ぜひ実物を拝見したいと思っていました。バッグの展示も、そのデザインに込められた世界観を体現出来るように設えられており、オーナーの方のオープンカー・後部座席にさりげなく置かれた様は、バッグを持つ方のライフスタイルまでもが見事に構築されていて、まるでセレクトショップのような雰囲気でした。
2階の美容室スペースに、トートバッグや渡辺事務所のカラフルな名刺等が展示されていました
モノだけでなく、場とのコーディネートがなされた展示

オーナーの方を含め、4者の個性が競演するという、ともすると“オレがオレが”という雰囲気に(見る方はお腹一杯…)なる可能性もあることと思いますが、どれもがとても自然にその場にあり、すっかり長居してしまうほど居心地が良かったことを思うと、それが建築(空間)の持つ強度ということなのかなあ、等と後でしみじみ感じました。
ガレージや店舗であるということをすっかり忘れて、誰かとても親しい人の家に招かれたような…そんな気持ちになりました。

…ということで、403architecture [dajiba]の天井については、また後日。

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自己紹介

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色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂