2013年6月27日木曜日

日本のサイン

先日Twitterにこの写真を掲載したところ、とても沢山の方にRTされたりお気に入りに登録されたりしました。
これは代官山のヒルサイドテラス内です。代官山は猿楽塚等の史跡も見られる歴史ある土地ですが、全国的に有名なお寺や神社ではなく、自分の暮らしの身近な場所にも、このような環境は存在するのだなと思い、やはりデザインを考える上でもう少しモノやコトの変遷ということを意識して行かなくては、と気持ちを新たにしました。

文字や色がなくても意図は伝わるものだな、と思いました。
日本のサイン。これくらいで十分、というところも多いのではないかと常々考えています。過去に撮った写真を探してみたら、そのような視点で見ているものが色々出てきました。

庭園の留め石。ここから先はご遠慮ください、という静かなメッセージ。
御殿場東山ミュージアム入り口にて。裏の林から取って来てつくりました、という雰囲気の侵入防止柵。
その地に・場にある素材を使った表示や工作物。伝統的な建築物と同様、至極自然に周辺環境に溶け込んでいます。

山梨県忍野村でみかけた、駐車場まわりの柵。蕎麦屋の店主の方がつくられたもの。
その地に馴染むということは、単に埋没する・目立たないというマイナスの視点だけではないことが実感できるのではないでしょうか。景観アドバイザーを務めている関係から、特に山梨県には訪れる機会が増えましたが、様々な地域で見られる住民の手による丁寧な環境整備は、周りの景色が引き立ってとても個性的だと感じることが数多くあります。

文字や誘目性の高い色が必要な空間・環境ももちろんあります。でも、どこもかしこも均一に目立たせれば良いかというと、やはり主張や表示には『ふさわしさ』という尺度があってしかるべきだと思います。

それは照明ともよく似ていて、とにかく最大限に明るくしておけば安心・安全、という思い込みをそろそろ捨てて、省エネの観点からも季節や時間の変化に応じた適切な明るさを使いこなすべきである、という考え方と重なります。

数年前を想像することすら難しい、時間の流れ。一方、今いる場所は自身が生きてきた時間より圧倒的に、長い時間を背負っている場合が殆どです。これから10年、20年先を予測することは大変難しいことですが、同じ目線で10年、20年と少しずつ過去を見直していくということに、もう少し気を遣って行きたいと思っています。

2013年6月13日木曜日

お知らせ-GSフリーペーパー第二号発行!(まちあるき地図の作成を担当しました)

昨年から会員になりましたNPO法人GSデザイン会議が発行するフリーペーパーの第二号が完成しました。
内容はこちら。

この度縁あって、同誌に掲載されている神田神保町のまちあるき地図の企画・制作を担当させて頂きました。

第二号のテーマは『まちと○○とわたし』です。編集長・尾内志帆さんが切り取った『今』がとてもリアルに刻まれています。
都内各所や学校等に設置されていますので、見かけました方、ぜひお手に取ってみて下さい。

そして手に取った方は『○○』の部分にご自身が興味ある分野に関することなど、自由に言葉を当てはめて頂くと、まちとの距離がぐっと縮まるのではないかと思っています。

また事務局では設置して下さる団体・施設等、広く募集しています。ご興味のあります方やGSデザイン会議の活動に賛同して頂ける方、ぜひ事務局まで連絡下さい。


今回、まちあるき地図を作成するにあたり、自身が代表を務めている素材色彩研究会MATECOにて『測色ワークショップ』を実施し、そのリサーチの結果を盛り込み、素材と色を頼りにまちを歩く、という試みを行いました。
定員12名のところ、大変多くの方にご要望頂き、当日は20余名・2班に分かれてのリサーチとなりました。実施した測色のより詳細なまとめは、MATECOレポートして編集し近日中に公開する予定です。


色のリサーチは調和やバランスに対するリテラシーの向上を図るための、とても良い訓練です。

素材や色のリサーチは環境色彩デザインに欠くことのできない、ベーシックでありながら毎回様々な発見のある作業です。

普段何気なく歩いているまちも、素材と色という切り口が加わると、それまであまり意識されなかった時間が気になりだす、と参加してくれた学生が言っていたことが印象に残っています。

先日、環境色彩調査には何の新しさもない・面白くもない、とある土木の専門家に言われ、そのことについてずっと考え続けています。新しい手法ではないことは自覚しているつもりですが、参加者の多くが時間を忘れるほど夢中になりマテリアルを凝視する姿からは、ミクロな視点が教えてくれる素材が醸し出す雰囲気や目に見えない時間というスケールを、知ることができたのではないかと感じています。

新しい視点の発見を、創造に生かすために。そうした微細なもの・ことの良さを、大きなスケールに置き換えて双方を行き来することは、MATECOの課題の一つでもあります。

自己紹介

自分の写真
色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂