2012年5月9日水曜日

測色014-御殿場とらや

測色シリーズ、前回から随分と時間が空いてしまいました。
昨年夏以降、MATECOの企画・調整に追われていたため…等と言い訳をしつつ。また興味ある色彩に出会いましたので、今年度はもう少しペースを上げつつ、コツコツと続けていきたいと思います。

5月1日(火)、スタッフと山梨県へ調査に出かけました。曇りの予報があいにくの雨、早々に調査を切り上げざるを得ませんでした。でもせっかく車で遠出をしたのだからということで、内藤廣氏設計のとらや茶房を見学して帰社することにしました。

建物全景。菓子工房と茶房があります。
屋根と側壁は塗装鋼板です。周囲の緑に馴染み、渋い色だなあと思って早速測ってみると、5BG 3.5/1.0程度。一見グレイに見えますが、ほのかに青緑味があります。

回廊を振り返ると、ガラスに庭園の風景が映し出され、万華鏡のようでした。
この回廊部分の柱は、N3.5程度。屋根や側壁と異なり、ほぼ無彩色のグレイでした。もしや面と線で色を使い分けているのかなあ、と一緒にいたスタッフに告げると、『そこまでコントロールしてますかねえ』 とやや懐疑的な反応が返って来ました。

あるいは、塗装鋼板は既製品・既製色なのかも知れない、と思いました。このくらいの数量を特注色で施工することは現実的には考えにくいな、でも内藤氏レベルになると例えコストがかかっても特注色で発注するのかな…等と、つい選定・決定のプロセスについて色々妄想してしまいました。

明度・彩度の低い色は自然の緑の中にひっそりと溶け込むように馴染みます。自然界の基調色、土や樹木の幹などと同調するため、と考えています。またほのかに色味がある、ということも周囲の色に染まったような、穏やかな親和性を感じさせます。 ただ難しいのは、建築物の規模が大きくなると(特に高層化する場合)、低明度色は重く圧迫感を与える可能性があり、あくまで周辺との関係や用途・規模による、ということを鑑みなくてはならない、と思っています。

とらや茶房は御殿場東山ミュージアムという施設の一角にあり、同じ敷地内には元首相・岸信介氏が晩年を過ごした東山旧岸邸があります。建築家・吉田五十八氏が晩年(1969年竣工)に設計した近代数奇屋建築は、建物内部も見学することが出来ます。

茶房の屋根の色はこの旧岸邸と同じ色を選択したのでは、と推測(妄想?)。
建築の特徴などを紹介するビデオの中で、興味深い解説がありました。吉田五十八がこの建物の設計において、いくつかの『新しい素材』にチャレンジしていた、ということです。
下の写真、玄関を入ってすぐの坪庭、窓外に取り付けられたすだれもその一つ。細いアルミパイプ製でした。日本建築にアルミ、と聞くと少し違和感を覚えますが、実際に見た印象はとても繊細で、室内から見ると質感はさほど意識されず、その軽快さとシャープさが上手く坪庭のスケール感に馴染んでいる印象を受けました。
中庭の窓外に設置されたアルミ製のすだれ
なぜその材料・色を選択したのか?『何か新しい材料を使ってみたかった』という答えもあるのだと思いました。
MATECO設立以来、益々そのことが気になって仕方がありません。

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自己紹介

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色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂